セミナー開会のご挨拶

公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター 副理事長 橋本 毅 氏

公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター副理事長 橋本 毅

生衛業支援セミナー開会の挨拶

只今、紹介いただました北海道生活衛生営業指導センター副理事長の橋本でございます。開会にあたり、一言ご挨拶を申しあげます。

本日は平日のお昼過ぎ、生衛業の皆様には大変お忙しい時間の中にも関わらず、お集まりいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

また、指導センター主催の本セミナーは北海道からの補助金をいただき開催させて頂いております。

関係各位の皆様方にも重ねてお礼を申し上げます。

本日のテーマにも出てきますが、この新型コロナウィルス、この言葉が使われはじめ、そして蔓延して間もなく2年が経過いたします。

生衛業の皆さんには、この2年近く毎日が大変な日々であったと思っておりますし、私も商売をしていることからも、大変緊張感のある日々であったと思っております。しかしながら、ようやく少し先に、明るい光、光明が見えてきたかなと思っております。

しかし、一方、本日の報道では、札幌では二桁の感染者と、まだまだ安心するのには時期が早いのかなと感じております。

食と観光が魅力の観光立国と言われている北海道でありますが、そういった意味ではコロナ前に戻るまでには、まだまだ時間がかかると思っております。

そのような中、本日のセミナーを開催するにあたり、6つの生衛業組合から実行委員をお願いしてセミナーを企画・開催をさせていただきました。

本日は、北海道科学大学の秋原先生から感染症対策についてのお話し、そして、北海道観光振興機構の生川先生からアフターコロナに向けた北海道観光の展望のお話しと、それぞれの立場からお話をいただくことになっております。

お二人の先生には、大変お忙しい中、本日の講演をお引き受けいただきましたこと、高い席からでございますが改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。

指導センターは、生活衛生事業者の皆様のお役に立てるような事業をこれからも展開して参りたいと考えております。

何卒、皆様方のご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。

最後になりますが、このセミナーが皆様方の仕事のお役に立つこと、そして皆様の益々のご健勝とご繁栄をご祈念申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。

本日はよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

講 演

講演1「新型コロナウイルスをはじめとした感染症とその対策」講師 北海道科学大学 保健医療学部 看護学科教授 秋原 志穂 氏

新型コロナウイルスをはじめとした感染症とその対策

講師 北海道科学大学 保健医療学部 看護学科教授 秋原 志穂 氏

秋原志穂先生は平成7年3月、東京大学医学部保健学科をご卒業後、平成13年に、東京大学大学院医学系研究科で「保健学博士」の学位を取得。

その後、北海道医療大学、大阪府立看護大学、大阪府立大学に勤務後、平成21年4月からは大阪市立大学大学院において看護学研究科の教授に就かれ、平成29年4月からは、現在の 北海道科学大学保健医療学部看護学科の教授としてご活躍されています。

先生はこれまで多くの子供が感染するロタウイルスやノロウイルスを予防するための研究や、結核にかかった人に対する看護の研究、最近では新型コロナウイルスに関する研究など幅広く感染症をもつ患者の看護と感染制御に関することをご研究されています。

また、新型コロナウイルスについては、感染症の専門家として、UHBテレビの「みんテレ」や、北海道新聞、毎日新聞などの、コメンテーターとしてもご活躍されています。

講演内容

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本日は、生活衛生営業指導センターのセミナーにお招きいただきまして本当にありがとうございます。新型コロナウイルスが日本に入ってきましてまもなく2年になります。生活衛生同業組合の方々には大変厳しい2年間であったことが推察されます。普段から新型コロナ対策には十分注意され、対策についても何度も聞いていると思いますが、私たち医療従事者でも感染症対策については、同じようなことを何度も繰り返し勉強しいる現状があります。繰り返しになるかもしれませんが、皆さんの少しでもお役に立てればと願っております。

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本日の講義内容は、微生物の特徴、新型コロナウイルスが出現したということ、他の感染症、感染対策、新型コロナウイルス対策を中心にお話したいと思います。

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微生物について皆さまはこれまで具体的に考えたことがないかと思いますが、「微生物って何か?」というと、その言葉のとおり顕微鏡などで見ないと分からない小さな生き物です。細菌、酵母、原生動物、そしてウイルスも含みます。花粉がこの図で言うと一番大きく、人の髪の毛の三分の一ぐらいの太さの大きさです。人の細胞はそれよりもっと小さく、新型コロナでも話題になる飛沫、唾液を含む飛沫は3μから5μ。大きなもので50μとか100μぐらいにもなります。PM2.5は、2.5というように2.5μm以下です。μというのは1mmの千分の1です。細菌が1μぐらいですので、千分の1mmぐらい。ウイルスはそれよりもさらに小さいです。

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顕微鏡で見えるのは細菌まで。ウイルスは、電子顕微鏡という特別な顕微鏡を用いないと見ることはできません。

私たちはこんな小さな小さなものにずっと翻弄されています。ただ、この翻弄されているのは新型コロナウイルスだけではなく、古くは紀元前から細菌やウイルスと共存しています。また、打ち勝ってきているものもあります。新型コロナウイルスはウイルスですが、細菌も食中毒などで問題になるかと思います。この違いは細菌は栄養、水があり適度な温度があれば自分で増えることができます。ウイルスは自分で増えることはできません。必ず動物や人に感染して増えます。ウイルスは無機質な物に付着して、そこで増殖するということはありません。ただし、ものすごく小さく、また増える力は強いので、しばしば問題になります。

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微生物の主な感染経路は、後ほどもう一度お話しますが、空気感染、飛沫感染、接触感染が、主な感染経路です。新型コロナウイルスの主体は飛沫感染です。一部空気感染するのではないかと言われてますが、そこは明確ではありません。また、接触感染はするとは言われていますが、メインは飛沫感染です。

飛沫というのは口から出る咳、くしゃみ、会話の中に出る水分を伴ったもので、その中にウイルスが含まれているものです。その他の感染としては、例えば昆虫に噛まれる、ダニに噛まれるSFTSなどがあります。動物では北海道ならキタキツネのエキノコックスなど。その他にも狂犬病。狂犬病ウイルスに感染している犬などに噛まれ感染する病気などがあります。これらは古代エジプトの時代から、例えばポリオとか天然痘などの病気があったことが分かっています。弥生時代には、結核。当時の遺体からDNAで結核に感染して亡くなったことが確認されています。このように私たちは太古の昔からウイルスや細菌と戦ったり共存を繰り返しているのです。

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そして一番新しいのが新型コロナウイルスで、私たちの生活を一変させました。私も時々テレビや、新聞でコメントさせていただき、「対策をきちんと取らなければいけない」などと言う側の人間で、皆様方のように事業をされてる方は本当に大打撃で大変だろうと思いながらも、一方で社会全体に広まってしまうと、飲食業、観光業のみならず、色々なものがストップしてしまうため、対策としては早めにうち、これらの対策を早く終えるのがベストかなと思っています。新型コロナウイルスもウイルス学的には、小さな100nm、0.1μの大きさのものになります。何故新型コロナウイルスかと言いますと、コロナウイルスには何種類もあり、今回、新しく出てきたので新型コロナウイルスと言われています。これまでも風邪とかの原因となっているコロナウイルスがありました。コロナウイルスの特徴は、形が王冠、クラウンといいますが、このように突起があることからコロナウイルスと言われています。コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2というレセプターに結合すると言われ、人間で言うと、気道、気管、肺などに多くレセプターがあるため、そこに感染して新型コロナウイルスがくっつきやすくなります。そのため、呼吸器が悪化して症状が現れます。

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北海道の新型コロナウイルスの流行は、第1波は2月です。2月28日に、北海道知事から北海道の独自の緊急事態宣言が出されたのが始まりで、つい最近までが第5波となります。第1波、第2波の時には、今から考えると非常に少ない感染者でしたが、その時はもう大変な事態でした。第1波では、最高で15人。第2波、国の緊急事態宣言が出た時では、北海道は40人台と、その後の第3、第4、第5波から比べると、少ない感染者でも大変な事態と大騒ぎとなりました。

また、この時にはこれほど大がかりに、かつ長期になるとは想像していませんでした。1年ぐらいかという話もありましたが、2年以上続きそうな様子を見ると大変なウイルスであると改めて感じています。このウイルスが問題なのは、インフルエンザも症状は悪化しますが、コロナは入院患者が多く、そのため医療が逼迫してくる。そういう意味でもやはりこのウイルスには対策を取っていく、取らざるを得ないのかなというところです。

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これは北海道の療養者全体のグラフです。第4波で今一番多い時で8500人が療養。そのうちの約半分は入院もできない、宿泊施設にも入れない方がいました。いわゆる調整中という方です。この時は保健所の機能はパンク状態、大学教員などもお手伝いしていましたが、保健師さんが夜中過ぎまで働いても回らない状態がずっと続いていたのです。結果的には医療にかかることができず自宅で亡くなってしまう方がいました。

第5波もデルタ株が出て急増しました。これは第4波を超えるかの勢いでしたが、ちょうど第4波の終わりから、ワクチンが可能となり、医療従事者は北海道で2月から接種可能となり、第5波の時には高齢者や医療従事者の方の多くに接種が終了していたことで、逼迫前に終了したのかと思っています。結局ワクチンが進むことで、総体として感染者も収まり、重症化する人が少なくなるということがすごくメリットだと思っています。これが去年との大きな違いです。

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コロナウイルスの臨床症状は、発症から一週間程度は、ほとんどは風邪症状もしくは無症状のまま経過します。8割の方は軽症のまま治癒、20%の方は中等性の症状、呼吸困難、咳、痰が出るなど、そのうちの一部、2~3%は人工呼吸器の管理が必要な状態、また、一部の方はさらにECMOという心肺を同時に管理する機械が必要な状況になっています。新型コロナウイルス感染症のもう一つ難しいのは、すべての方に症状が出れば感染者だと分かりますが、その半分ぐらいは初期には無症状だと言われています。

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スライドは昨年のデータですが、45%が無症状、コロナのPCR検査を利用してでも約半分は無症状で、その内、32%が最初は無症状ですが、その後に症状が出てきます。その時に検査をするということは何か疑わしいことがあるからですが、その時点で症状があるのは23%しかいない。つまり症状がなくても新型コロナに感染している人は沢山いますし、その人たちも感染させる力はあります。ここがこのウイルスの厄介なところと思います。

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インフルエンザの場合はほぼ顕性とって言って症状が出るので、周りや自分で「インフルエンザじゃないか」と疑い、結果として仕事や学校を休むなどの対策に繋がりますが、無症状だと気が付かず、普通の生活をしてそこから広がっていくのが問題と思います。また、新型コロナウイルスのウイルス量は少ないと検出が難しく、可能なのは発症前の2日前ぐらいから検出できます。2日前ぐらいから感染性があると言われています。その後ウイルス量がピークに3日、2日~3日ぐらいでピークになりますが、その後徐々に減っていきます。これは体内の免疫機能が働くからです。PCR検査は、かなり長期間検出できますが、血液検査で検出はウイルスの遺伝子のみで、検出されたからといって感染性があるかどうかまでは分かりません。例えば8日以降に検査をしても陽性になることはあります。ただしそれと感染は別物で症状が出てから7日目以降はかなり減少して感染性はない。10日目以降では感染性はほぼゼロになると考えられています。もちろん中には稀なケースで感染性を有する人もいますが、その稀なケースを議論してもしかたないと思います。

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6月23日時点の新型コロナウイルスの年齢別の致死率は、致死率1.6%、圧倒的に高齢者が多く、特に70代以上80代以上の致死率が高く、10歳未満それから20歳未満では見当たりません。

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スライドは、男女別の死亡者を示したものです。男性が若干多いです。90歳以上で女性が多いのは90歳以上では女性の分母が多いためかと思いますが、その他の年代も圧倒的に男性が多いです。この理由がよく分かりませんが、先ほどお話した受容体の発現量が男性の方が多いとか、あとは免疫反応も男性に比べると女性反応の方が強く、免疫反応を有すると言われていて、そのために男性の致死率が高いのではないかと言われています。

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昨年末の新型コロナですが、何度か拡大はありましたが、昨年9月あたりからススキノあたりのバー、接待を伴う飲食店、ホストクラブなどでクラスターが出てきました。10月にクラブで最大のクラスターで23人、これは最終的に35人にまでになりましたが、クラスターがあった後も、右側の表で赤字になっているところが、ススキノになりますが、ニュークラブ、バー、ホストクラブ、メンズパブ、接待を伴う飲食店とクラスターが立て続けに起きました。

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その後、第3波が急拡大しますが、急拡大と言っても第3波は第4、第5波に比べると小さい山です。10月末から急激に増えため、現状として、飲食店への対応も厳しくならざるを得なかったかと思います。これで見ますと、この山もありながら緊急事態宣言が度々、この赤矢印で起きていますし、このオレンジ色は蔓延防止と重点措置でここには示していませんが、ほとんどの時期で北海道内、特に札幌・ススキノで対策が取られ、本当に皆さんの営業に影響がなかった期間は短かったことが分かり、大変ご苦労されたのだと思います。

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他の感染症についても少しお話します。

新型コロナウイルス対策を行っていると実は他の感染症の対策にもなっています。去年インフルエンザがほぼありませんでした。これはインフルエンザも飛沫感染が主体で、マスク、手洗いを行うことがどれだけ効果があるかが分かったかと思います。このように新型コロナ対策でも十分ですが、結核について少しお話します。

皆さんは結核に注意されてお店を営業したことはありますか。

まず北海道の方で結核に注意されることはないかと思います。でも北海道も結核はゼロではないので、注意していただきたい病気でもあります。結核はご高齢の方ですと聞いたことがある病気かなと思いますが、若い人は、ほとんど知らない病気かと。ただし、結核は世界的に見ると世界の三大感染症と言われ、エイズ、マラリア、結核という3つの感染症にあげられ、死亡者も世界的に見るととても多く、毎年一千万人ぐらいが発病し、まさに現代病と言われています。ただし結核は適切な対策を取ることで減らすことがでることからも、今回取り上げました。

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これは日本の結核の現状で、昭和25年ぐらいまでは死亡原因の第1位でした。その後、国の政策でかなり減少、2019年度が最新のデータになるのですが、人口10万人当たりの罹患率は11.5とだいぶ減ってきています。新たに結核になる患者さんは約1万4人と、つい最近まで2万人を超え、かなり大きな感染症だったのですが、努力の甲斐があり減ってきています。死亡順位も昭和初期は1位が、今は31位です。それでも結構上の方です。

北海道は罹患率が低く、全国平均よりもずっと低い7.4で全国で5番目に少ない、結核関係者からするとすごく優秀な地域となります。私は北海道に4年前に戻って来ましたが、その前は大阪にいました。大阪はとても結核が多く、罹患率で言うと25.6、これでもかなり減ったところです。大阪では一部の地域や労働者の間で罹患率が高く、結果として、罹患率が300とか400と言われ、アフリカのボツワナレベルって言われている結核罹患率のため、大阪では結核の研究をしていました。ただし日本は世界的に見ると先進国の中では罹患率がとても高くて、先進国の中ではちょっと恥ずかしい状況ではあります。そのため、国では先進国並みに罹患率を抑えたいと動いています。

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結核の感染経路で多いのは普通のオフィスとかで、その他に皆さんの関係で言うとレジャー施設や飲食店も4%、家庭なども27%と、やはり人が集まるところは、感染症の問題となります。結核は空気感染します。空気感染の対処については後ほどお話させていただきます。

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結核で、本日もう1点覚えていただきたいのは、今、結核での問題は外国人の結核がとても増えていることです。

外国人労働者や留学生で増えてます。北海道ではまだ多くはありませんが、東京辺りでのコンビニの店員は、ほぼ外国人が従事しています。大阪もかなり外国人の方が多く居住しています。特に若い人の結核のうち、20代から29歳の結核の中で外国人が占める割合は70%です。北海道も実習生の方とか来られることがあるかと思いますが、健康管理には注意が必要と思います。

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発病リスクが高い方は、やはり免疫状態が弱ってる方、糖尿病の方、ホルモン剤を使用している方とかです。また、健康管理に恵まれない路上生活者のほか、自分で自分の健康管理を上手くコントロールできない精神障害者の方、過酷な労働環境にいる方、それから私たち医療従事者、そして教師の方、それから皆様のように人が集まるようなところで働く方もハイリスクの方だと思います。

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結核は、感染しても必ず感染するわけではありません。だからといって安心という訳ではないのですが、感染しても発病する人は1割2割。8割は一生の間に1回も発病しません。しかし最近は初発感染と言って感染してすぐ発病する人が増えています。一方、高齢者の方は若い時に1回感染し、その後、免疫力が弱り発病。70代とか80代の方は、少し免疫力が弱っているので、ちょっと微熱が続く、咳が出る、それがいつまでも続くとなると結核も疑う必要があります。ただし今、結核が北海道に少なく、また、全体的に減ってることから、医者もあまり疑わないなど、発見が遅れる場合があります。それが医療界でも問題となっています。若い医師では結核を診断できる人が少なく、そもそも疑わないことがあります。結核にはならない方が絶対いいのです。皆さんはほぼ100%BCGを打っていると思いますが、ワクチン打っていたら絶対かからないかと言うと、そうではない。ただし、ワクチンで初期段階の対応ができる免疫があるということになるかと思います。

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結核になると入院期間は平均2ヶ月。この間、隔離状態となり、病院から1歩も出られません。ある意味とてもつらい病気で、社会的にも差別を受ける病気です。その後も2年間程は通院。薬も標準的治療でも6ヶ月間は抗菌薬を服用となります。薬の数もとても多いです。

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結核は空気感染しますので、対策は換気です。結核は換気の悪いところで、集団感染が起こりやすいです。私たち自身の予防対策は少なく、免疫力を下げない、過度なストレスをためない、睡眠不足にならない。また、事業主さんには働く人の健康管理にも責任があると思いますので、その辺の注意も必要です。健康診断で早期発見、早期治療が大事になります。初期症状は風邪と似ていますが、咳が2週間以上続いていた時は受診するように勧めてください。職場の定期検診、それから住民健診でも結構ですので、受けていただくようにしてください。

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結核の感染者がいても感染を広がらないようにするには、やはり換気です。結核が起きる、集団感染が起きる場所としては、インターネットカフェ、ゲームセンター、カラオケ、サウナなど、密閉された場所で起きることが多いので、注意していただきたいと思います。

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続いて、ノロウイルスのお話をします。私は大学院時代、ノロウイルスの研究をしていました。美味しそうな牡蠣がある写真を載せましたが、牡蠣の中は多くのウイルスが存在することがあります。二枚貝で問題になり、特に時期は冬から春にかけてです。ウイルスは、ヒトの小腸ですごく増えます。そのため、発症すると下痢をします。便の中には大量にウイルスが含まれます。その数は便1g中に1億個ぐらいのウイルスがいると言われています。ノロウイルスは、感染力がとても強く、昔の実験結果ですが、ウイルスが10個や100個ぐらいでも感染力があると言われています。これは、通常のウイルスは考えられません。通常は多量のウイルスが体内に侵入しないと感染しませんが、ノロウイルスはウイルスが微量でも感染すると言われていますので、注意が必要です。

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状は、大体1日か2日の症状で収まりますが、下痢、嘔吐、発熱。ただし、発熱は比較的少ないですが、下痢と嘔吐が頻繁に起きます。飲食店の方は、牡蠣シーズンですので、注意していただければと思います。特に生牡蠣には注意が必要で、牡蠣鍋とかで熱するといいと思っているかもしれませんが、中心まで熱を通すのはすごく大変で、ウイルスを死滅に至るまで熱を通すのはちょっと難しいと思います。感染経路は経口・糞便感染でつまり接触感染します。下痢便のヒトから、すごく少量でもどこかについていて、そこから感染しますので、予防としては、接触感染の予防が一番になります。手洗いが重要ですが、注意が必要なのは、アルコールは効かなくはないのですが、コロナとかに比べるとアルコールが効きづらいです。アルコールで消毒したから大丈夫ではなくて、ノロウイルスの場合は流水で洗い流すのが一番です。どちらか選べるのであれば、流水で洗っていただきたいと思います。特に、トイレ後の手洗いは注意してください。十分な手洗いをしないでお店で従事しまうと、そこからまた食べ物に付着して感染が起きますので、注意してください。

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アルコールが効きづらいっていうことで一番良いのは、次亜塩素酸ナトリウムです。ハイターやブリーチとかの。手はブリーチでは洗えませんが、清掃する時には手袋をしてブリーチを薄めたもので清掃してください。リネンの消毒をどのようにしたらよいのかと聞かれることがありますが、これも次亜塩素酸ナトリウムに浸した上で、通常の洗濯をすると良いと思います。85℃1分以上の熱湯消毒も良いのですが、次亜塩素酸ナトリウムに浸すのが良いと思います。次亜塩素酸の適切な濃度にするには、スライド以外にも、様々なところに記載されていますので、ご確認ください。

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コロナ対策に戻ります。現在のステージは1です。様々なことが緩和されていますが、深酒しない、大声を出さないなどの呼びかけがされています。

皆さんは、これまでも対策が取られてきて、今やっと解除された状況で、今後もし増加したらどうしようかと大変心配されているかと思いますが、実はこのステージ分類が変わるだろうと言われています。

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今は例えば数値目標が明確に出ていて、1週間の10万人当たりの感染者数が何人であるとかで、1週間当たり20万人の感染者数が何人であるとかで、分類されていますが、今後は、医療の逼迫度に合わせて、レベルを上げたり下げたりすると言われています。

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ウイルスの感染ですが、ウイルスの増殖には、ウイルスが細胞に感染して増殖しますが、実際に感染するには、かなりのウイルスが体内に入らないと感染はしません。ウイルスの全てに感染性があって、例えば100万個とか200万個入ってもそれが全て感染して増えると言うと、そうではありません。ノロウイルス以外はかなりの量が体内に入らないと感染が成立しません。

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感染を防ぐためには、感染のチェーン、輪ともいいますが、病原体があって、宿主である人に感染して、宿主がどっかに出して、それがまた他の人に感染していくという、こうチェーンになります。私たちは病原体をなくすことができません。ゼロにすることはできない。私たち宿主をゼロにすることもできない、ではどうするのか、それは感染経路を断つしかないのです。感染経路は私たちが今やっている手洗い、消毒や換気などになります。同じことの繰り返しで申しわけありませんが、感染症のは予防はそれしかありません。

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先ほどお話した結核は空気感染、例えば今私が結核でゴホゴホと咳をして、一番端っこの一人でも感染する可能性はあります。空中を漂うからです。

コロナウイルスの主体は飛沫感染です。感染者の周り2メートル以内ぐらいを注意すれば良いのです。ノロウイルスは接触感染、これは感染した人が自分の嘔吐物や排泄物からのウイルスをあちこちに付着させ、それが他のヒトの口や粘膜に入ってしまう。食べ物について食べてしまうということで感染となります。

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オフィスでの飛沫感染で、この飛沫がどのぐらい飛ぶか。理化学研究所のデータですが、パーテーションを1.2、1.4、1.6メートルで実験しています。パーテーションが無い場合は飛沫がすべて対面の人に飛んでいます。1.2メートルでは結構飛んでいます。1.4メートルと1.6メートルではほとんど効果は変わりらない。つまり、床から1.4メートルあれば十分だということがこの実験からわかります。

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スライドは、飛沫飛散における湿度の影響です。例えば湿度が30%だと飛沫がかなり遠くまで飛んでいます。湿度が60%だとやっぱり対面の人まで。湿度が90%あると、かなり手前に落ちるのです。

湿度が高いと、飛沫が重たくなって身の回りに落ちる感染者の周りに落ちる、このことから、部屋の湿度も重要になってきますので、冬場の北海道だと本当に室内が30%ぐらいまで乾燥していることもあると思いますが、湿度にも注意をして、飛沫が遠まで飛ばないようにすることも一つの対策になると思います。

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スライドは、パーテーションをしっかりと組んだ宮城県の事務室でのクラスター事例です。

これは北海道新聞にも載りましたが、事務室では160cmのパーテーションを組んでました。そうしたところ、クラスターが起きました。これはどうしてかと言うと、ちゃんとパーテションをしていたのですが、換気が不十分だったのです。寒かったので廊下側の入口を1か所しか開けていなくて、窓は全部閉めていました。そのため、この中で換気が1つ1つのこの区切りの中での換気が十分じゃなかったために、クラスターが起きてしまった事例です。つまり、ここは高いパーテーションがかえって問題となりクラスターが起きました。上の方で空気が通るように140cmぐらいのパーテーションでいいんじゃないか、空気を十分に通るように、入口だけでは不十分で、やっぱり対面で窓も開けてもらいたいですし、サーキュレーターをこういったところに角角において、空気がしっかりと出入りするように置いてください。冬は寒いと思いますが、窓を一時的に30分に1回開けるか、常時少しずつ開けるか、という対策になります。飛沫感染対策として留意することは、飛沫が飛ぶっていうことです。そのためにはマスクはもうずっと言われていますが、マスク、それからソーシャルディスタンス、飛沫は重たいのでそれ程遠くには飛びません。距離が開いていれば、リスクは低くなります。

そして、仕切り、パーテーションも重要ですが、高さによってはかえって換気が悪くなることがありますので、そこは注意が必要です。換気が飛沫感染対策には重要になります。次に接触感染ですが、新型コロナはほとんどが飛沫感染で、接触感染も一部しますが、重要さでは、飛沫感染対策になります。ただし、ノロウイルスなどは接触感染しますので注意してください。

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人は無意識に顔を1時間に23回触るという研究結果があります。その手でまた違うところを触っていくという危険性がありますし、何かに触った手で、ウイルスが付いた手で目をこすったり、触ったり、口を触ったりすると、感染するリスクが出てきますので、ここは注意してください。

私たちの手は、飲食店の方はもう手は汚いもんのだとインプットされているとは思いますが、私たちはウイルスや菌と共存している部分がありますので、全部をなくすことはできません。

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私たちの手には元々、常在菌と言ってその人についている菌があります。これは通常は感染を起こしません。黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌とか、ただ免疫力がすごく弱ってる人の場合には感染を起こす場合が稀にあります。一番問題になるのは、一過性菌って言われていて皮膚の表面にさらっと付いているもの。これは病院内ではMRSAや、緑膿菌などもありますが、ノロウイルスや新型コロナウイルスも入ります。

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ただし、これは手を洗うことで落ちます。つまり対策が取れます。そのため、手洗いはやっぱり大事です。

手洗い手洗いって言われると、重いかもしれませんが、水とハンドソープでも十分落とせます。

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特にコロナは石鹸がよく効きます。流水で15秒洗っただけでも手についている菌の100分の1に減らすことができますし、ハンドソープ15秒、10秒プラス流水15秒ぐらいで1万分の1近くに落とすことができると言われています。そして、プラスアルコールをするともっと落ちます。ですから手洗いは本当に一番お金もかからないし、一番簡単な感染対策になります。ノロウィルスはできるだけ流水が良いと言いましたが、それ以外のウイルスや菌は、ほとんどアルコールで殺菌できます。アルコールの手指消毒はすごくメリットがあるものです。短時間でできます。流水と石鹸は水がないと洗えない。ただし、病院内でも院内感染が起きる場合がありますが、その原因のほとんどは医療者の手指を介してです。看護師さんとか医師もすごく手洗いを注意していますが、手を洗いたい時に水がなかったら手洗いはできないですよね。それで2000年頃から、水の手洗いが一番じゃないと、アルコールで洗いましょうっていう風に変わりました。対策はアルコールそれだけ。簡便に対策がとれます。

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皆さんの中にはアルコールで手荒れしている人もいるかもしれませんが、アルコール手指消毒剤には、エモリエントという成分が入っていて手荒れを防ぐものがあります。手荒れをする方はちょっと種類を変えてみるなど良い製品を使うと手荒れがしなくなりますので試してみてください。

アルコールの種類が違ういますが、A社、B社、C社みたいな感じでどれも減りますとなっていますが、手洗いの効果を目で確認することはできません。

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スライドは手洗いを目で確認した実験で、洗う前と洗った後の手を、手の形をした細菌を増やす寒天培地に、ペタっと手を置いて、1日間、培養した結果です。

段、菌は目に見えませんが、スライドの写真、これコロニーといいまして、1個の細菌が増殖して塊となると見えるようになるのです。手洗いを丁寧にすると菌はほとんど増えない。このぐらい手洗いっていうのは菌を落とすことができるということです。

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飛沫感染と空気感染は、両方換気が必要になりますが、これは1人当たり30平方メートル毎時間必要だと言われていて、ビル管理法に基づく施設ですと自動的にこの基準になるようになっているそうです。ただし、そこに満たない場合はやはり、強制的に毎時間2回以上、30分に1回ぐらい数分に窓を開けることでそれが保たれると言われています。空気の流れを作ることが大事なので、複数の窓がある場合は2方向で開けて空気の流れを作ってあげる。窓が1つしかない所はドア開けるとか、サーキュレーターを使用するなど工夫をしていただきたいと思います。

あとは狭いところです。スモーキングエリアとかロッカールーム、控室など狭いところは、一時に沢山の方が入ることがあると思いますが、そこは注意してください。いくら主たるお店の中の換気を良くしても、この様な場所で感染することはありますので、狭い場所・空間の注意をしてください。

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スライドは中国のレストランでクラスターが起きた時の図です。ここも換気がすごく悪く、感染者がいた場所、この周りに空気がよどんでいたのです。換気の回数が少なく、ここで滞留しています。この感染が原因で、コロナは空気感染するのではないかと言われることになりました。2m以上に離れた人でも、換気が悪いと飛沫感染した事例です。

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換気方法は先ほど説明しました風力で強制的に2方向開けて換気する方法と、1方向で換気する方法、それから2段階、部屋を2段階にして少し温めた空気と冬場なんかは換気をしていただくといいかなと思います。これから冬になり寒くてなかなか窓を開けられないっていうことがありますが、ちょっと暖房を調節することで、当分は換気をお願いしたいと思います。

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清掃・消毒は消毒用エタノールまたは塩素性の漂白剤、次亜塩素酸ナトリウムでお願いします。

ただし、環境全体に消毒薬を噴霧することはやめてください。必要がありません。あとはヒトが良く手が触れるところは清掃を。ドアノブ、スイッチとか、消毒薬で拭くのが望ましく、できたら先に汚れを落とすのが良いのですが、拭き取りの掃除で十分です。

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これまで、次亜塩素酸ナトリウムについて、お話しをしていますが、皆さんの中には次亜塩素酸水を使用している方もいるかと思います。効果はどちらもありますが、使い方が違うというか、濃度が違ったりしますので間違わないように濃度等、使用方法をきちんと確認してから使用してください。

次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性、次亜塩素酸水は酸性です。どちらも噴霧しないでください。噴霧すると良いと思って、加湿器とかで噴霧されている場面もたまに見ますが、絶対に消毒薬の噴霧は行わないでください。

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感染対策のまとめとして、どれが一番っていうことはありません。本当は順位をつけられないのですが、飛沫感染はやはりマスクです。そしてソーシャルディスタンス。飛沫は遠くまで飛びませんので、ちょっとディスタンスがあれば大丈夫です。またパーテーションも併用して頂ければと思います。接触感染は手洗いが一番。あと清掃です。空気感染は私たちができることとしては換気しかありません。病院内ですと、厳重なM95マスクをするなどありますが、一般的には換気です。

個人を守って周囲の人を守るのが一番と思います。また、ワクチンがある感染症はワクチン接種が一番だと思います。打てない方は別として、いま、これだけ感染症が減ってるのはワクチンの効果があると思っています。

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以前、生衛業の方に新型コロナの対策で困っていることなどについて、聞く機会がありました。そこで、最後にそれをQ&A形式でお話します。

一つ目は、「すべての業種の方で、手指の消毒、体温、マスクの使用など、どの業種においても基本的な対策は実施していますが、一番重要視することは何か」というご質問でしたが、これは、先ほどのスライド(スライド47参照)にあったように何の感染症の対策をするかということで私は変わると思っていますが、基本は手洗いです。手洗いがまず一番原則として行い、プラス飛沫感染はマスクということになってきますので、何の対策をしたいのかを考えていただければと思います。

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ホテル旅館関係の方から、「発熱などを呈したお客様には病院に行ってもらうなど対応をしているが、そのまま入院となった場合、部屋に置かれていた荷物や使用したリネン類などどのような点に気を付けて対応すべきか、コロナを含む他の感染症にも対応できるアドバイスをいただければ思っています」というご質問でしたが、荷物は。

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発熱があるのであれば、今はコロナが一番疑われるかと思いますので、マスク、エプロン、グローブをしてアルコールで拭き取ってください。お荷物は本人にお返しすると思いますが、カバンなどは、拭き取れば十分かと思います。清掃はアルコールでの消毒と掃除、拭き取りで大丈夫です。下痢性の場合は次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが望ましいのですが、ご存知のとおり金属には腐食してしまうので駄目ですし、あとは濃度が強いと、絨毯などの色が抜けることもありますので、十分注意して使用してください。

リネン類は先程もお話ししましたが、水で洗うか次亜塩素酸ナトリウムに漬ける、CDCのガイドライン上はそうなっております。

Slide:51

主に飲食店関係の方から、「今後、冬を迎えるにあたり暖気を保ちながら効率的な換気方法とは、換気のためにドアを開けた場合ドア付近の人に感染リスクが高くなることはないか不安」というご質問でしたが、換気中であればドアの付近であっても常に空気が流れている状態で、そんなに多量のウイルスが飛んでくるということは考えられませんので、ドア付近の人だけが感染のリスクが高くなることはないかと思います。換気については先ほどのスライド(スライド43・44参照)を参考にしていただきたいのですが、暖気を取りながらの換気は確かに難しいかなと思います。暖房の温度の調整、それからどうしても叶わない時はヘパフィルター付きの空気清浄機も併用していただければと思います。

Slide:52

接客を伴う飲食店の方から、「お客様はどうしても飲食に伴い、マスクを外し会話することとなります。これまでクラスター発生なども踏まえどのように接客すると良いか」というご質問でしたが、これは本当に難しくて、最近も岐阜県でクラスターが起きています。やはり接客中に従業員がマスクを付けない、至近距離で接している、話している、カラオケも使っていたということがあります。


Slide:53・54

私は、やはりカラオケが一番良くないかなと思っていますが、クラスターが起きた店と起きてない店では、チェックリストの項目を遵守しているお店は、クラスターが起きていない。クラスターが起きているお店は遵守率が低い結果があります。やはり指示・推奨されている感染対策について、いかに遵守するかということがクラスターを起こさないことに繋がると思います。

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座席はできるだけ正面横並びを避けてください。横並びも結構飛沫を浴びると言われていますので、横並びの場合はちょっと席、ディスタンスをとる、それか斜め前に座るのが良いと思います。特にカラオケには注意してください。最近では、旭川市でも起きていますが、ほとんどカラオケ、それからワクチンを接種していない方での感染です。この両方が重なった場合に起きると思ってください。それからその他のどうしてもマスクを外さざるを得ないっていう状況であれば、もうその他の感染対策をできるだけ換気とかでやっていくしかないかなと思います。

パーテーションに関しては先程お話しましたが、パーテーションで感染、空気の淀みができるんじゃないかということでしたが、先程、宮城県の事例でお話したとり(スライド35参照)、天井部分も遮ってしまうと換気ができなくなりますので、上部は空気が流れるように、それからサーキュレーター等を用いて空気の流れをつくること、それからCO2にも注意をしてCO2を測る測定器もあります。目安は1000ppmです。CO2メーターを購入する際は、電気屋さんと相談するなど性能の良い製品を買っていただきければと思います。また、空気の換気量不足には、ヘパフィルターが付いた空気清浄機も用いていただければと思います。

講演内容を一部端折ったのにもかかわらず、時間をオーバーしてしまい大変申し訳ございませんでした。

以上で、私からのお話は終わります。ご清聴ありがとうございました。

講演2「アフターコロナに向けた北海道観光の展望」講師 公益社団法人 北海道観光振興機構総務企画本部 副本部長 兼 政策室 室長 生川 幸伸 氏

アフターコロナに向けた北海道観光の展望

講師 公益社団法人 北海道観光振興機構総務企画本部 副本部長 兼 政策室室長 生川 幸伸 氏

生川幸伸先生は平成7年に兵庫県の関西学院大学をご卒業後、平成10年5月 社団法人 北海道観光連盟に入社。

平成20年 公益社団法人 北海道観光振興機構への体制移行後も含め、国内外のプロモーション業務を多く経験され、その間、道内各地の観光地づくりや観光商品開発の支援のほか、令和2年7月に国立アイヌ民族博物館「ウポポイ」がオープンした際には、アイヌ文化による受入整備にも取り組まれました。

令和3年4月からは、豊富な知識・経験そして高い能力を活かし、同社の総務企画本部副本部長兼政策室室長としてご活躍されています。

講演内容

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ただいまご紹介いただきました、北海道観光振興機構の生川と申します。日頃より、北海道の観光について皆様のご協力をいただきましてありがとうございます。

これまで経済活動を活発化してきた身として二年弱思うように活動できなかったこともあり、少し前向きなお話をしたい考えていますが、そのためにも、これまでの振り返りも含めて話を進めていきたいなと思います。

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最初に弊社について簡単に紹介をさせていただきます。北海道観光振興機構ですが、紐解きますと昭和21年終戦直後に任意団体ではありますが前身の会社があり、その後、昭和37年、社団法人で北海道観光連盟へ改組し、これまでは、行政主導の団体でしたが、観光でしっかり北海道をり上げていきましょうということで平成20年4月に社団法人北海道観光振興機構が発足しました。

私は社員ですが、それ以外に出向者の方が36名程。さらに、民間の企業、主に旅行業、運輸関係、旅行会社、最近では行政の方が勉強に来られています。また、北海道を盛り上げていきましょうということで、コカコーラさん、サッポロビールさんといった、大きな企業様もからもお越しいただき、現在総勢46名で対応をしています。

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北海道庁様と私どもとの役割分担ということで、皆さんお分かりかと思いますが道庁さんで観光振興の目的の明確化として、基礎を作っていただき、私どもはしっかりそれをマーケティングをして、マネジメントをするという大きな役割があります。新型コロナの環境下で行きますと災害時の被害、非常時対応ということで道民割などをしています。

右側の予算の推移を見ていただくと、2014年、517とありますが、元々北海道の観光予算はどのくらいかと、よく聞かれますが、7、8年前で当機構での予算はたった5億円ぐらい、それが翌年、一気に倍となり、今は、16億、17億当初予算です。その後、新型コロナの関係で、昨年度は23億ぐらいの予算を執行しています。

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実は思うように国内外のプロモーションというのはできていませんが、ただし、この1年半以上は、今後、沢山のお客様が来た時に対応していきましょうということで、私どもは人材育成、観光人材の育成、それから高齢者、障害を持った方々へのおもてなしということでユニバーサルツーリズム、後ほど出てきますが、アウトドアアドベンチャー、欧米の方からのお客様を迎えるための人気のプログラムでサイクルツーリズム、そういったものに主に力点を置いてやっています。

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またコロナ禍での小中高修学旅行は、北海道の場合はしっかり北海道内で修学旅行に行っていただこうと、バス1台の乗車定員45人乗りを半分に、25人以下にして行っていただく、その間貸切バスの事業者も全く稼働してなかったものを復活させる、そういったところで補助をいただいて、最後の思い出修学旅行に行っていただくという支援をさせていただいています。あとウポポイが去年オープンしたことから、普及の取り組み、それから海外に向けては、やはりデジタルを使って現地とオンラインの商談会などをやっています。またあまりメディアにも取り上げられていませんが、アドベンチャートラベルワールドサミットが、本来ですと今年の9月に世界50か国から70か国のバイヤーさんが北海道に訪れて大きな商談会をするということで800名規模のものが企画をされていました。残念ながら、バーチャルでの開催になりましたが、2023年にリベンジをして一応内定をいただいていますので、2年後、開催されることによって日本、北海道というのが世界に改めて認知をしていけるというような大会が予定されています。

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それ以外に、先程申し上げた、マーケティングという話がありました。私共の方でビッグデータ、オープンデータと、世の中には様々なデータが出ていますが、観光に関係する様々なデータ、皆様方に見て分析をしていただきたいということで、今年の1月にプラットフォームを立ち上げています。

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お仕事に戻られて観光振興機構というサイトを見ていただければと思います。紹介をしていなかったのですが、観光地域づくり法人DMOという肩書きが観光庁にありますが、こちらで私どもは広域連携DMOということで全国に10カ所ほどあると思いますが、北海道は一つですので大くくりでマネジメントをして稼ぐ力を皆様に伝授していくというような役割で、色んな業界の方を巻き込んで盛り上げましょうといった組織になっています。

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何をするかと言うと、多様な関係者の合意形成は、なかなか教科書どおりにはできていませんが、そういったことマーケティングで他の収集それから地域の資源の開発、磨きあげ、こういったことを中心にやっています。

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もちろん北海道内にもこれは複数の自治体をまたいだ広域連携ということで大体年間100万人ぐらいの観光客のお客様が来られる地域になりますが、こういったところで同じように地域連携DMOということで活動をされています。

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また一つの自治体でも色々な特色、例えば岩見沢ではワインツーリズム。

倶知安は、ここはコロナ前も冬にインバウンドのスキーヤーが沢山訪れていましたが、通年型のリゾートを目指すということで色々な活動をされています。

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今日のテーマですが、我々観光産業が道内経済にどれだけ貢献しているかといったところの観点、それから、これから人口減少社会ということで後程その数字の恐ろしさを少し説明していきますが、それに対しての交流人口の拡大の重要性、そしてコロナ前から言われています観光デジタルトランスフォーメーションの可能性について、観光の立場で少し述べていきたいと思います。

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最初にスライドの左側、道内観光消費7割超減ということで、令和2年度ですから昨年の4月から今年の3月までの観光消費額を調査分析した記事です。

その前の年、令和元年というのは、春先に十連休とかゴールデンウィークがあったと思いますし、2月の下旬は新型コロナが来たとはいえ、そこそこお客様も来ていたということで、それとの比較で7割減というような数字で昨年度は終わってしまいました。

一方で、これは観光全体のことなんですが、真ん中の方は観光土産品、2020年の上期の数字ですが、半分以下というような数字で見出しを挙げています。

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北海道庁さんの方で昭和37年から、道外から北海道にいらっしゃるお客様の数字を5年刻みですが、表にしたものです。分かりやすいところで言うと1975年あたりちょうど1971年に知床旅情が大ヒットということで、この辺から少しお客様が増え、青函トンネルが開通した1988年、この辺が1990年代としてかなり大きな、際立った数字となっています。また、北海道新幹線開業した2016年あたりは多く、本当に最後一番多かったのは2018年、外国人と道外のお客様を合わせて年間約900万を超えた数字になっています。それが昨年度は215万人まで減ったというショッキングな数字です。これは、多分遡ること1975年頃の数字です。

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これをグラフ化してみました。先程申し上げた第一次北海道ブームがあって、それから青函トンネルが開通した頃にぐっと伸び、実はあのバブルはもうはじけているのですけど安遠短ブームが少しあり、その後東日本大震災を経たのち約7年間、つい昨年、一昨年まで一気に観光客がある意味バブルのような伸びかたで、要因はインバウンド外国人観光客が一気に北海道にも訪れたことが言えます。これは政府の様々な施策、例えばビザの要件の緩和、空港体制やCIQの環境整備などをしました。これらが要因となって、沢山訪れたという数字です。

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市町村別の、コロナ前とコロナ禍の行動変容の比較ですが、札幌には沢山いらっしゃるんですが、それでも昨年はもう37.4%しか来なかった。小樽は非常に厳しく、最盛期は年間800万人のお客様が、昨年は260万です。

ただこのコロナで観光客、我々も含めて行動変容が少し出ています。これいわゆるマイクロツーリズムっていう言葉がよく星野リゾートのオーナーがよく言われていますが、例えば札幌からだったら中山峠までちょっと行ってみようかとか、周辺の石狩、江別、恵庭は少しですが昨年非常に健闘した数字になります。

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昨年で言うと、今年もそうですけが、都市部は3つのイメージが非常に高かった。それからこのマイクロツーリズム、大体車で1時間、距離で80Km以内のところに皆さん行動範囲としては旅行していたので、決定的なのはインバウンドが昨年ではゼロであったというような結果になっています。あと延べ宿泊者数の推移ですが、やはりインバウンド、赤色の登別、洞爺湖温泉、倶知安町は本当に直近はインバウンド頼みで、洞爺湖ですと多分40%は年間の入り込みの中でインバウンドの比重を占めていたというような数字も残っています。

この辺が非常に厳しい状態にあるということになります。一つ言えるのは、主要温泉地というのは今非常に厳しい状態にあるということが言えます。

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先程、私どもで観光の消費額を調査をしていると話をしました。令和元年度、道内客、道外客それから海外の方の大体推計すると合わせて1兆5千億ぐらいの消費をしていると言われています。そのうちやはり外国人が全体の入り込み数244万人ということで、構成比で言うと5%のお客様なんですが、その方が4300億、率にして約30%を消費しているという数字です。この辺は消費単価が高いと言われているので、今後はしっかり消費をしていただく、高単価なものを買っていただく、そういった政策が必要だと言われています。

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GDPに換算しますと令和元年、食料品の製造業、それから農業、そういったところをも上回る約8千億弱ぐらいのGDP、観光GDPと言われますが道内総生産のうち4%、人によっては1兆円という風にも言われています。それぐらいの今観光業っていうのは、位置にあって少なからず道内経済に影響を与えているという風に言るかと思います。

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ここから二つ目の項目になりますが、人口減少社会への対応です。これは日本人の推計で予測が出ています。

2020年はこの数値に従って大体これぐらい推移しているらしいのですが、恐らく2040年には2020年の時より約11.5%減、約1億1千万人に。2053年、今から約30年で1億人を割る見込みとなっています。

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北海道は、2015年から2019年の間に約13万人が減少し、直近で言うと522万人と更に下がっている。クイズで出題していますが、今北海道内で10万人以上の都市が大体9か所あると言われていますが、2045年時点でこの9か所の中で減少率が一番高い都市はどこかという問題です。

Slide:21

それが函館、釧路と小樽で、小樽は多分2015年比で半分ぐらいになるだろうと言われています。北海道全体でも4百万人ぐらいになるだろうと言われています。

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この3つの都市の共通点、1つは第3次産業が非常に他の都市よりも率としては大きい。また、この3都市は、札幌に次いで観光客が沢山訪れる第2、第3、第4の都市ということで、沢山訪れていただけるが、この人たちへの対応がこれからの課題になってくることがこの数字からも分かるということです。

小樽も、今約11万人の人口に、平成30年あたりだったと思いますが、年間800万人お客様が来てます。ある意味ちょっとオーバーツーリズムのような現象も起きていました。

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政府の見解ですが、この人口減少社会への対応ということで観光庁の2017年の資料ですが、安倍内閣時代「まち・ひと・しごと創生総合戦略」ということで、平たく言うと人口一人減ってくる部分を外国人もしくは国内の旅行者、日帰りの旅行者を含めて観光者から稼ごうという考え方です。日本人は大体一人当たり125万円を年間消費するらしいんです。その分をこの外から来る人たちで稼ごうじゃないかいう考え方です。

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直近の話として、「明日の日本を支える観光ビジョン」ということで、もうなりふり構わず国家戦略として国土交通省、観光庁だけではなく、例えば文部科学省は文化観光推進法を制定し、これまであまり日の当たらなかった文化財、遺跡、そういったものにも光を当てて、活用しながら観光に結び付けていこう、あるいは環境省で言うと国立公園満喫プロジェクトということで、全国の国立公園の中からモデルを作って最終的には年間1千万人の観光客に来ていただきましょうと、経済産業省では色々な業種観光に限らず小売りの皆様方も含めてキャッシュレスの推進ということで、さまざまな補助金を出して今展開しているという状態です。

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目標は閣議決定の中で2016年に掲げられていました。これは東京オリンピックに合わせて掲げられていたもので、2020年訪日外国人4千万人、2030年6千万人ということで、数字の方はまだコロナ禍でも目標数値は取り下げていません。9年後6千万人を目指しているというような状態です。これがコロナ直前はどうであったかということですが、2019年の実績は、3188万人までお客様は海外から日本にいらっしゃっていたと。で、8兆円の目標を掲げていたんのですが、残念ながら48千億しか消費がなかったと。ただリピーターは結構いい数字でまとまっていて、近隣のアジアを中心ですが、やはり沢山のお客様が来ていただいていたという結果になっています。

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ここからはコロナに立ち向かう新たな動きとして、「デジタルトランスフォーメーションとは」ということで実は私も今回この講演をいただいて勉強をさせていただいた次第で、一緒になって勉強していきたいと思っています。ホームページから読み解くと単なる作業の効率化ではなく、デジタル技術によって人々の生活をより良くなるような変革、既存の価値観を覆す技術の革新がもたらされることという風に定義付けをされています。

特にこの観光DXと言われているものについては、記載のとおり観光における体験価値を向上させる、新たな地域観光モデルを構築しますよという風なことになってます。既に全国で色んな実証実験が行われています。少しですが北海道は政府の資料に載っていました。北海道バーチャルトラベルというようなことが書いてますが、色々な商社であるとか、色々なところが様々な最新の技術を使って実証実験を行っています。

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そもそも観光DX、この観光業界はデジタル化が本当に遅れていました。従来型のオペレーションと言いますか、アナログでファックスを使ったりとかしていました。今どうして急ぎなさいと言ってるのかは、色々な本を読んでいくとやはり訪れる観光客の世代がこの残り9年間でガラッと変わりますよというところが根底にあります。

特にアジア圏の若い20代30代がこれからマーケットの市場になるので、この人たちは生まれた時からデジタルの社会で生きていて、日本に来た時、それが当たり前と思っています。それが導入されていなかったらやはり立ち行かないところが根底にあるようです。今回この新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るったことで一気にこの持続可能な地域の観光振興と言ったところに導入が検討されるきっかけになっているという、そういう理由から予算がこれからどんどんついていくと見られています。

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この色々な研究論文をちょっと簡単にまとめさせていただきました。左の下、これは、経済産業省の「スマートリゾートハンドブック」です。皆様もホームページで簡単に手に入ります。これを見ていただければ、大体今日のお話は全部理解いただけるかなと思うのですが、大きく分けてこの観光DXの活用分野というものをビジネス支援、それから観光、これは経営者が観光客を支援する形、それから観光地全体の経営を支援する形という風に分野別になっています。

この辺のプロモーションとかコンテンツは、例えば私どもの方で活用しながらするものだと思っていますが、皆様方で言うと、こういったところに活用のヒントがあるんじゃないかなと思っています。

それから最新の技術的な動向、特徴ですが、皆様も大体何かしら見たことあるような言葉が載っていますので、興味がありましたらこのスマートリゾートハンドブックを見ていただいて、自分たちに置き換えて何かできればなと思っています。

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ビジネス支援の事例として先進的なものを紹介したいと思います。

和歌山県の白浜の取り組みです。和歌山県白浜にちっちゃな空港があります。

東京からの飛行機しか飛んでいない空港ですが、ここを使って未来形の導線というか観光のスタイルとして、出発前から予めアプリの登録をしておく必要があるんのですが、それで空港着いてから顔認証でそのお客様の行きたい導線を色々案内してくれて情報提供していただける。

メリットは購買意欲の喚起ということでこんなのどうですかっていうようなものが出てくるという事例、NECさんと地元でタッグを組んで実証実験をやっています。もう一つは三重県伊勢神宮内宮の近くにあるおかげ横丁です。ここで老舗の飲食店が観光情報プラットフォームを活用して来店予測、一応その地域の入り込みですとかそのお店のデータをしっかり入力をしてアルゴリズムというようなものをもって予測をして、効率化を図る。

これは食材の量とか、従業員の勤務シフト、そういったものも含めて構築したということで、もう4年ほど前の例ですが、日本観光振興協会のコンテストで大賞を受賞した事例です。

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道内の動きですが、手ぶら観光ということで特にインバウンドのお客様は非常に大きなスーツケース持って来られたりします。あるいは先程紹介しました、サイクルツーリズムというのは自分の自転車を持ってくるような方もいます。

当然空港着いたらそのまま自転車を組み立ててスタートをする人もいますので、そういった方達の荷物をホテルに届けるとか、あるいは出発までの間に空港に送り届けるというようなことを、今一生懸命全国的に展開しています。北海道も、旭川、函館で始めています。これも一つのDXだと言われています。

それから文化財の観光活用ということで先程、文科省の話もしましたが、全国の色々な文化財を使って色々な今の最新技術を用いて、より分かり易く皆様に見て興味を引き立たせるそんな仕組みも行っています。これにも様々な補助金があります。

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それとこれはある意味、観光地経営というところになるのですが、よく今全国のモデルとして有名なのは岐阜県の下呂温泉、ここは各施設さんの色んな顧客データを全部集約、地元DMOが観光協会が集客をして、どこからどういった属性の人が来てるのかを把握して、そこに積極的にアプローチする。あるいは他の競合の地域との比較とかも含めて分析して、自分たちで地域で取り組む事例です。これは結構最初に合意形成、やはりひょっとしたらその隣の施設の情報が漏れるんじゃないかっていうようなこともあるのでしょうけれども、それはしっかりセキュリティを保った状態でこのDMOが責任を持ってコントロールをしていく仕組みのようです。近い将来全国にこういった仕組みは広がっていくと考えられます。

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北海道の事例が何かないかと色々探したんですが、帯広でMaasということで基本的には二次交通と色々な掛け合わせをした取り組みということで十勝バスさんが積極的に住民と観光客にバスに乗ってもらって、周辺の沿線の様々な施設を体験してもらうという取り組みです。

多分今月実証事業始まっていると思います。確か郊外の大空団地にバスを走らせて、地域の交流に役立つような取り組みもしていると聞いています。

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冒頭申し上げた観光地域づくりDMOという組織が国から、これからは観光地経営という考え方でDMOが中心となって、色々な取り組みをして、地域で稼ぐ観光を目指していきましょうとなっているのですが、これを達成するために必要なことで今盛んに叫ばれてるのは、やはり住民とのかかわりが必ず必要ですということです。これを形成していくエリアマネジメントの6つの要素ということで、従来から言われているアクセスの利便性、値頃感、それからその観光地の安全性、清潔感、これも必須条件ですが、やはり住民の力を借りないとこの観光地経営っていうのは成り立たない。観光資源の魅力それからムード、雰囲気作り、そういったところにはやっぱり住民がしっかり関わっていないと成り立たないとなってます。

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この調査は、私共が昨年丁度コロナの一番酷かった時でが、道内のDMOあるいは観光協会に調査をした結果です。今本当にこのコロナ禍で一番困っていることは何ですかというようなことでの質問ですが、やはり観光戦略の見直しはなかなか自分たちではちょっとできないよっていうこと、それから長年顕在化してた人手不足もあげられますが、この中でもやはり一番皆様が気にしているのはコロナ前まで本当に年間北海道で最大312万人お越しいただいてた観光客がある意味いなくなって、ただ海外との行き来を再開するとやっぱりちょっと怖いんじゃないかということで住民に対する受け入れ、理解促進ということを非常に気にしているという結果が出ています。あと先ほど申し上げたデジタル化についてもなかなか自分たちでは解決しづらいというような回答も出ているところです。

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日本の旅行者の心境を調査したのがこの日本交通公社の調査として先月発表されています。今回のコロナを経て、旅行先の選択とか旅行の行動については8割の人が変化しますと言っています。一つはやはり混雑は回避する、当面バスツアーの参加は自粛しますとかです。それから本当にもう身近な人としか旅行はできないねっていうのは今はそういう心境だということです。一つは昨年からもなかなか旅行にいけないということで、自分のひいきにしている観光地などを支援したいという話はありまして、ふるさと納税も昨年は非常に伸びたと聞いてますし、今年も増えるのかなと思いますが、収束後の旅行意欲として、今一番年代別に聞いたところ20代30代の女性がすぐにでも旅行に行きたいと回答しています。

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このデータは毎年秋にブランド総合研究所が、都道府県の魅力度ランキングの結果を公表してますが、13年連続で北海道は魅力度ランキングで1位。しかもその魅力度点が昨年よりも増しているのです。それは色々な意味で北海道には密がないとかのイメージがあることだと思うのですが、今そういう立ち位置にありますし、市町村は魅力度で上位10位中に4つも入っている。これは観光の影響かもしれませんし、食の分野でも北海道に魅力を感じているのかもしれません。トップ10以外にも多くの自治体が上位にランキングされています。

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昨年末に、当時の菅首相の下「観光戦略実行推進会議」で、アフターコロナに向けてこういう対策を行うという指針が出ています。

注目すべきは、観光でご飯を食べている人はどれくらいいるのかですが、だいたい日本全体で9百万人いるそうです。日本の就業者数が約6千なにがしだったと思うのですが、約7.4%の方が観光でご飯を食べているということで、こういうところからも観光はこれから大事な産業だと認識をしています。

その中で当面は国の支援として観光地の再生、それからホテル、旅館の再生です。この辺も地域が主体となって取り組んでいく分には様々な補助を出していきますとか、あるいはデジタル技術を活用してコンテンツを磨き上げていきましょうというような取り組みで、本当にコロナ禍で急に話題として出てきたのは実はワーケーションなんです。

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コロナ前の2014年頃から実は総務省とかが、本州の方でワーケーションという取り組みが始まっていました。ただコロナになってさらに盛り上がりを見せて、今は全国でワーケーションの誘致合戦が始まっています。各省庁が様々な補助金を出して誘致しているところですが、北海道は2019年から北海道型ワーケーションいうことで道内の自治体に声を掛けて様々な取り組みを行っています。

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本州などは、やはり不動産や旅行会社などが手を組んで既存の施設とかを使ってリゾート観光を中心とした地域で盛んに行われている実態があります。

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一方で北海道は、なかなか大手の資本が入ってませんので、自治体主導っていうのが非常に多くて、大体個人型ワーケーションと、出張型ワーケーションの大きく分けるとこの二択になっています。

その中でも少し興味深い、北海道らしいのは、夏休みに親子でワーケーションしませんかとか、中にはキャンプでワーケーションしましょうとか、それからビジネスとして合宿型、北見は有名ですがサテライトオフィス。これはもう各自治体の考え方だと思いますが、今後やはり人口減少社会ということを考えると、大手の企業と連携して地域の課題解決をしていく、そういったところがこれから重要じゃないかと考えています。

右横に、強みとはと書いていますが、企業、このワーケーションをとおして企業を立地して、最終的には環境対策とかそういったところにもしっかり関わってもらうというようなところが大事じゃないかなと思います。

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昨年、私がお邪魔させていただいて、非常にユニークな取り組みだと思ったのは、道北の幌加内町朱鞠内湖です。幻の魚イトウが釣れるということで有名ですが、ここで合宿型でIT企業の研修でここに缶詰で普段メールでしかやり取りしてない社員が、チームワークを高めるような取り組みが行われています。

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色々話をしてきましたが、観光のカスタマージャーニーということで観光客を誘導する際に一つの形態として、旅行に行きたいねということで認知興味から始まって、旅前に旅行の計画を立てて、旅中で色んな情報、観光案内所とかで情報を聞き出して、そして旅後に楽しかったらいろんな発信するという一つのこの観光のカスタマジャーニーを体系化した図になります。

昔は、我々も含めてこの認知向上のところにお金、プロモーション、経費をたくさん費やしてきました。なんて無駄なことをしてたんだと思うのですが、最近は、この旅中、旅前のところに色々な広告をかけて、困った時にすっとお客様に誘引できるようなプロモーションを盛んに行っています。

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昨年北海道は、コロナ禍で道内7空港が一括民営化ということで立ち上がったんですが、今は非常に厳しい状況にありますが、引き続きそれぞれの空港の特性を生かしてこれからも航空路線を誘致していく予定になっています。

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また、新幹線も9年後には札幌までやってくるということで、我々の目指すべき目標っていうのは2030年というところに主眼を置いて、コロナ禍ではありますが、ここを1つの目標値にして、これからもプロモーション、様々な政策をやっていく予定にしています。

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先程申し上げたとおり、デジタルトランスフォーメーションというのはもう全ての場面でこのデジタル化というのが図られて、初めて成り立つものだという風に思っています。

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これは北海道経済連合会が今年の6月に発表した2050年の北海道のありたい姿を図式化しています。

これを見ていくと新聞記事もありますとおり、半分近くが観光にかかわるものになっています。

もちろん住民の方も当然関与してきますが、観光のキーワードが沢山この中には載っています。

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国もスーパーシティといった形で色々な先駆的な取り組みをするところを今選定している最中です。

この構想の中に観光拠点というものがあります。

もちろん防災拠点とかヘルスケア、高齢者対策といったものが主体ではありますが、日本で和歌山県すさみ町、それからオーバーツーリズムで問題になっていた神奈川県鎌倉市、こういったところが今名乗りを上げている状況です。

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まとめに入っていきますが、2022年、来年に向けて、引き続き感染対策、これは安心安全をしっかり地元で発信をしていただくというところが重要になってまいります。

また、量より質ということで、高付加価値の旅行プランの創出というのがこれから重要になってくると言われています。

そういう意味ではアウトドア、それから先ほど申し上げたワーケーション、こういったところに多様なアプローチをこれからはしていかないと成り立たないだろうと我々も思っています。いわゆる量から質へということで、政府も様々な指針を出していまして、持続可能な観光の推進ということで4つの項目が出ています。

つい先ごろ、世界の持続可能な観光地100選ということで、日本から12か所エントリーされていて、日本の中でも北海道はニセコ町がいち早く手を挙げて、このGreenDesitinationsに署名をしている状況です。

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先程申し上げたとおり、2030年の目標に向かって、これから我々は目線をそこに合わせて、しっかり取り組んでいきたいと考えています。

やはり地産地消ということで、域内調達率をいかに高めるかということがこれから重要と思います。

簡単ではありますが、私からの講演とさせていただきます。どうもありがとうございました。

セミナー閉会のご挨拶

生衛業支援セミナー実行委員会 委員長 西間 由紀子 氏

生衛業支援セミナー実行委員会 委員長 西間 由紀子

生衛業支援セミナー閉会の挨拶

只今、紹介を受けました生衛業支援セミナー実行委員長の西間でございます。セミナーの閉会にあたり一言ご挨拶を申し上げます。

本日はお忙しい中、参加者の皆様には最後までセミナーにお付き合いいただき、感謝申し上げます。

本日の講演では、北海道科学大学の秋原先生からは、微生物に関する基本的なお話から、新型コロナウイルス、そして、これまで私たち人間と関わりの深い結核やノロウイルスについて、どのような対策を講じることが必要かなどを、わかりやすくお話していただきました。

また、公益社団法人北海道観光振興機構の生川先生からは、観光立国北海道の再構築に向け、アフターコロナを見据えた取り組みなどについて、様々な考え方や可能性についてお話をしていただきました。

お二人の先生には、参加者を代表しましてお礼を申し上げます。

秋原先生、生川先生、本当にありがとうございました。

開会の挨拶でもありましたが、以前のように食と観光が魅力の北海道を取り戻すにはまだまだ時間がかかると思っております。

今回のセミナーが今後の経営に少しでもお役に立てたら幸いです。

最後に、本日のセミナーを主催していただきました指導センター事務局の皆様に感謝申し上げ、実行委員長としての挨拶とさせていただきます。

改めまして、本日はありがとうございました。