(1)食品ロスをめぐる情勢

北海道農政部 食の安全・みどりの農業推進局食品政策課 主幹(食育)小森 康弘  様

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本日は、食品ロスをめぐる現状、北海道における取り組み、そして令和7年(2025年)3月に制定された「北海道食品ロス削減推進条例」の趣旨についてご説明します。

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まず、食品ロスとは、本来食べられるにもかかわらず、さまざまな理由で捨てられてしまう食品のことを指します。

令和5年度の国の推計では、日本国内で年間464万トンの食品ロスが発生しており、国民一人当たりに換算すると年間約37kg、つまり毎日おにぎり1個分が捨てられている計算になります。

これは、国連世界食糧計画による食糧支援量の370万トン、約1.3倍に相当するという状況になっております。

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食品ロスの増加は、ごみ処理費用の増大や温室効果ガスの排出など、経済面、環境面に大きな影響を与えています。

全国のごみ処理経費は2兆円を超え、一人当たりの経費にすると約12,200円となり、輸送やごみ処理の焼却に伴うCO₂排出と環境面でも影響がでています。

持続可能な社会の実現に向けて、食品ロス削減は重要な課題となっています。

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図は、日本の食品ロスの発生量で、事業系と家庭系に大別していますが、事業系は外食産業や食品製造業など、食品関連事業者由来から発生し、家庭系は一般家庭からの廃棄です。

令和5年度(2023年度)のデータでは、事業系が約231万トン、家庭系が約233万トンと、ほぼ同程度の量が発生しています。

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次に、食品ロス発生量の推移と削減目標ですが、国は2030年までに、2000年度比で、食品ロス発生量を半減する目標を掲げていましたが、事業系食品ロスは、202年度推計で8年前倒しして目標を達成したことから、削減率の目標を50%から60%へと引き上げました。

後ほど説明しますが、賞味期限の延長や「てまえどり」の推進など、事業者による取り組みの成果により削減が進んだものと推察しているところです。

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次に、食品ロス削減に対する方針ですが、国連の、SDGsのターゲット12.3において、2030年までに世界全体の食品廃棄量を半減することが掲げられています。

これを踏まえて、国では令和元年(2019年)10月に「食品ロス削減推進法」が施行され、国民運動として食品ロス削減を推進しています。

北海道でも「北海道食育推進計画」、「北海道食品ロス削減推進計画」が策定され、また、本年3月に条例が制定され関係者が連携して取り組んでいくこととしています。

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少しだけ、「北海道食品ロス削減推進計画」についてご説明させていただきます。

北海道は、食料の「生産地」という特性を持つ地域です。そのため、目指す姿としては「道民運動」として、道民一人ひとりが食品ロスの削減を実践していくことを掲げています。

「生産地だからこそ、もったいないの心を大切に」しながら、食育の推進やSDGsの達成に資する重要な取組として、道の計画に基づいた施策を進めているところです。

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計画では「関係者の役割」を明記し、それぞれが自らの立場で具体的な取組を実践していただくこととしています。

道としても、普及啓発などの活動を通じて、食品ロス削減の推進に取り組んでいます。

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北海道では、2030年度までに食品ロスを20%削減する目標を設定しています。

この達成に向け、各施策を取り組んでいくこととしています。

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令和4年度(2022年度)の推計では、家庭系が約9万トン、事業系が約20万トンと、事業系の方が多い傾向にあります。

なお、ビートパルプなどの飼料用副産物は除いた数値も参考値として公表しています。

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北海道では、政策の効果を把握するためにアンケート調査を毎年実施しています。

詳細は資料をご覧いただきたいと思いますが、家庭における食品ロスに向けた行動については家庭では概ね80%程度で推移していますが、外食時では70%程度となっております。

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あわせて食品ロス削減に向けた家庭での取組についても調査しており、冷凍保存を活用するなど、食品ロス削減に向けた具体的な行動をしていただいております。

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外食時においては、いわゆる適量注文、食べきれる分量を注文するなどの取組をしていただき、削減を図っております。

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食品ロス削減は農政部が窓口となり、教育庁、経済部、保健福祉部、環境生活部、市町村、消費者協会、事業者などと連携して進めています。

セミナーや料理教室、出前講座、など、さまざまな取り組みが展開されています。

本日お集まりの生活衛生同業組合におかれましても、事例の紹介やセミナー参加などで連携する取組みを実施させていただければと思います。

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道では、食品ロス削減に取り組む飲食店・宿泊施設・小売店を「どさんこ食べきり協力店」として登録し、ポスター掲示や店内放送などの啓発活動を行っています。

条例の制定を契機に、登録店の拡大を進めていますので、登録してもよいという店舗や施設がありましたら、直接お伺いして資料提供や説明をいたしますので、よろしくお願いします。

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スライドは、昨年(2024年)に取組んだ内容となっています。

昨年度は、講演と参加型の取組をあわせたセミナーやパネル展などを実施しております。

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参考事例としてご紹介しますが、道内の自治体では、「てまえどり」やレシピの工夫など、さまざまな取り組みが進められています。

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食品業界の取り組みにですが、いわゆる「1/3ルール」という商習慣があります。

これは、賞味期限までの期間を三等分し、製造日から最初の1/3の期間内にメーカーから納品を受けるというルールです。

そして、次の1/3の期間が終わると、店頭から商品が撤去されるという運用がされてきました。

この「1/3ルール」は、食品ロスの要因の一つと指摘されています。

そのため、フードチェーン全体での見直しや取り組みが求められているところです。

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現在、国もこの課題に対して働きかけを行っており、納品期限の緩和などの取り組みが進められています。

実際に、こうした取り組みに参加する企業も増えてきている状況です。

企業による取り組みが進められてきたことで、食品ロスの削減につながっているという状況が見られます。

詳細については、後ほど資料をご覧いただければと思います。

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次に、家庭での取り組みについてです。

消費者への普及啓発活動も重要な要素となっております。

例えば、冷蔵庫の中身を定期的にチェックすることや、消費者の皆様にも「てまえどり」へのご協力をお願いするなど、小売業者だけでなく、家庭でも意識を高めていただく取り組みを進めています。

また、右端に掲示しておりますが、家庭向けの啓発資料をさまざまな機会を通じて配布し、食品ロス削減に向けた行動を促す活動も行っています。

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こちらは、食べきりキャンペーンの実施につきまして、店舗にポスターを掲示していただきながら、消費者への普及啓発を進めています。

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次に、賞味期限と消費期限についてですが、この違いについては、なかなか認識されていないという状況にあります。

そこで、保健福祉部の食品衛生課と連携し、資料を作成して、さまざまな機会を通じて情報発信や資料の配布を行い、正しい理解を促す取り組みを進めているところです。

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次に、「フードバンク」の取り組みについてご紹介します。

活動としては、余った食品をフードバンクが取りまとめ、社会福祉協議会や子ども食堂などに供給する取り組みが行われております。

こうした活動は、食品ロスの発生を防ぎ、資源の有効活用につなげる重要な取り組みとして進められています。

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このようなフードバンク・フードシェアリングサービスについて、食品ロス削減セミナーなどにおいて取り組みを紹介しております。

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こちらは、「食品ロス削減に向けてできること」というテーマで、農林水産省がまとめた資料をもとに、当方で少しアレンジを加えて作成したものです。

一番上にも記載されていますが、食品ロスの発生には、直接的・間接的にさまざまな要因が複雑に関わっています。そのため、それぞれの立場で協力しながら、できることから取り組みを進めていくことが大切だという認識のもと、活動が進められています。

製造業の方々にとっては、需要予測精度向上など、難しいと思いますが、取り組みを進めていただきたいと思います。取組み内容については、セミナーなどでご紹介をしたりしています。

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北海道の取組の詳細はこちらからご覧いただけます。

北海道が進める食育(食べ残し対策) - 農政部食の安全・みどりの農業推進局食品政策課
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/data/advance/leftover.html

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最後に、令和7年3月に制定された「北海道食品ロス削減推進条例」についてご説明します。

制定の目的としては、まず「食育に対する理解促進」、そして「温室効果ガスの排出抑制に基づくSDGsの達成」が挙げられています。

この条例は、行政側からの提案ではなく、超党派の議員による提案として成立したものであり、特に温室効果ガスの削減がSDGsの実現につながるという認識のもと、その趣旨が条例の前文にも盛り込まれています。

また、食品ロスの削減は、「我が国の食料安全保障」にもつながる重要な取り組みです。食品ロスが減ることで、結果的に食料自給率の向上につながり、それが食料安全保障の強化にも寄与するという考え方が背景にあります。こうした観点からも、この条例にはその意義が反映されています。

条例の趣旨としては、「関係者が連携して取り組むこと」、そして「消費者を含めた各主体が自ら積極的に行動すること」が明記されています。

たとえば、第2章の第9条では、食品関連事業者、消費者、関係機関、関係団体、そして市町村が連携し、食品ロス削減に向けた取り組みを行うことが規定されています。

また、そのための情報提供や啓発活動の必要性についても明記されています。

このように、条例では関係者が一体となって取り組むことの重要性が強調されており、皆さまにもぜひご協力・ご連携をお願いしたいと考えています。

もう一つの特徴として、第1章の第6条には独自の設定がございます。国では10月30日を「食品ロス削減の日」と定めていますが、それに加えて、条例では10月24日から30日までの1週間を「食品ロス削減週間」として新たに設けています。

この期間には、集中的な普及啓発活動を行うこととしており、食品ロス削減に向けた意識の向上と行動の促進を図っているところです。

以上をもちまして、私からのご説明を終了させていただきます。

最後までご清聴いただき、誠にありがとうございました。